憲法修正、改正:
「修宪」は「修订宪法」の省略形で、憲法改正を意味します。先日5日開幕した全人代(全国人民代表大会)では、憲法改正の議論が行われています。
現行の憲法は中華人民共和国にとって第四版に当たる憲法で、1982年12月4日、第五期全人代で採択され公布されたものです。公布から現在に至るまでに1988年、1993年、1999年、そして2004年と四回の改正を経ていますので、今回は五回目の改正に当たります。
中華人民共和国は1949年に建国され、初めての憲法は1954年に公布されたもので、その後は1975年、また1978年、そして1982年にと、それぞれ新たなバージョンを発表してきました。
今回の改正の理由については、中国共産党の党規約の改正と同じように、これから中国が「新時代」を迎えるにあたり、改革を断行していくことを方針化したものとなっています。今回の憲法改正は、そうした改革の必要に合わせたものになります。
時代の変化に合わせて一つの国が動き出す姿を、私たちはこの目で目撃していることになりますね。
国家監察委員会:
憲法改正に合わせる形で立ち上げられた、中国全国の党機関・政府機関を対象に監察を行う組織です。これまでと違うのは、この監察委員会は共産党や政府に属さない国家監督機関となることです。
憲法改正にあたり、党中央委員会から出された「中国共産党中央委員会による憲法の一部内容の修正に関する意見」は、合計21項目の修正意見からなり、その中で「監察」に言及したものはなんと11項目にも上り、その中で、 新しくこの「監察委員会」の設置が提案されています。ちなみに、2月25日の時点で、既に全国31の省・直轄市・自治区において、早速三つのレベルの監察委員会が立ち上げられ、監察体制の整備に向けた取り組みがスタートしています。
今回の監察体制改革の起草に参画した中国政法大学の馬懐徳副学長の話によりますと、国家監察委員会は党の機関ではなく、党の機関と協力して作業を進める機関であるとされ、かと言って政府の機関でもなく、政府から独立して、政府と平行する機関として設立されるとしています。こうすることで、国家全体を監督する機関としての立ち位置を作っているのです。そして、この機関の設置は重要な行政改革の一部で、政府や裁判所、検察機関の活動をも監察する機能があります。
ご存知の通り、中国共産党にも紀律検査委員会という類似した性質の組織がありますが、紀律検査委員会は党内の組織であり、監督の対象は党員のみでした。ですが、今度設立される監察委員会の監督対象はもっと広く、「公権力を行使するすべての人」が監督対象となります。ちなみに、『中華人民共和国公務員法』の規定では、公権力を行使し、国家予算で給与を支給するすべての人が、広い意味での公務員に位置付けられますから、この監察委員会は国家機関だけでなく、裁判所、検察院、国営企業の経営者、公立の病院、学校、科学研究機関、文化、スポーツ関連の事業団体など、その全てが監督範囲に入ることになります。
監察委員会の職責は監督、取調べ、処分の三つとされています。具体的には、監察機関は主として汚職犯罪に関する取り調べを担当し、犯罪の事実が確認されると、検察機関に引き渡して提訴します。また、指名手配や出国規制、技術的な調査措置などに関しては、監察委員会が決定を下し、公安機関が実際のアクションをとることになります。
腐敗を許さないという共産党のスタンスを最も如実に体現する機関とも言えそうです。