(昭和36年7月14日条約第10号)
1958年6月10日 ニューヨークで作成
1959年6月7日 効力発生
1961年6月20日 加入書寄託
1961年9月18日 わが国について効力発生
第1条
この条約は、仲裁判断の承認及び執行が求められる国以外の国の領域内においてされ、かつ、自然人であると法人であるとを問わず、当事者の間の紛争から生じた判断の承認及び執行について適用する。この条約は、また、仲裁判断の承認及び執行が求められる国において内国判断と認められない判断についても適用する。
「仲裁判断」とは、各事案ごとに選定された仲裁人によってされた判断のほか、当事者から付託を受けた常設仲裁機関がした判断を含むものとする。
いかなる国も、この条約に署名し、これを批准し、若しくはこれに加入し、又は第10条の規定に基づき適用の拡張を通告するに当たり、他の締約国の領域においてされた判断の承認及び執行についてのみこの条約を適用する旨を相互主義の原則に基づき宣言することができる。また、いかなる国も、契約に基づくものであるかどうかを問わず、その国の国内法により商事と認められる法律関係から生ずる紛争についてのみこの条約を適用する旨を宣言することができる。
第2条
各締約国は、契約に基づくものであるかどうかを問わず、仲裁による解決が可能である事項に関する一定の法律関係につき、当事者の間にすでに生じているか、又は生ずることのある紛争の全部又は一部を仲裁に付託することを当事者が約した書面による合意を承認するものとする。
「書面による合意」とは、契約中の仲裁条項又は仲裁の合意であって、当事者が署名したもの又は交換された書簡若しくは電報に載っているものを含むものとする。
当事者がこの条にいう合意をした事項について訴えが提起されたときは、締約国の裁判所は、その合意が無効であるか、失効しているか、又は履行不能であると認める場合を除き、当事者の一方の請求により、仲裁に付託すべきことを当事者に命じなければならない。
第3条
各締約国は、次の諸条に定める条件の下に、仲裁判断を拘束力のあるものとして承認し、かつ、その判断が援用される領域の手続規則に従って執行するものとする。この条約が適用される仲裁判断の承認又は執行については、内国仲裁判断の承認又は執行について課せられるよりも実質的に厳重な条件又は高額の手数料若しくは課徴金を課してはならない。
第4条
前条にいう承認及び執行を得るためには、承認及び執行を申し立てる当事者は、その申立ての際に、次のものを提出しなければならない。
(a) 正当に認証された判断の原本又は正当に証明されたその謄本
(b) 第2条に掲げる合意の原本又は正当に証明されたその謄本
前記の判断又は合意が、判断が援用される国の公用語で作成されていない場合には、判断の承認及び執行を申し立てる当事者は、これらの文書の当該公用語への翻訳文を提出しなければならない。その翻訳文は、公の若しくは宣誓した翻訳者又は外交官若しくは領事官による証明を受けたものでなければならない。
第5条
判断の承認及び執行は、判断が不利益に援用される当事者の請求により、承認及び執行が求められた国の権限のある機関に対しその当事者が次の証拠を提出する場合に限り、拒否することができる。
(a) 第2条に掲げる合意の当事者が、その当事者に適用される法令により無能力者であったこと又は前記の合意が、当事者がその準拠法として指定した法令により若しくはその指定がなかったときは判断がされた国の法令により有効でないこと。
(b) 判断が不利益に援用される当事者が、仲裁人の選定若しくは仲裁手続について適当な通告を受けなかったこと又はその他の理由により防禦することが不可能であったこと。
(c) 判断が、仲裁付託の条項に定められていない紛争若しくはその条項の範囲内にない紛争に関するものであること又は仲裁付託の範囲をこえる事項に関する判定を含むこと。ただし、仲裁に付託された事項に関する判定が付託されなかった事項に関する判定から分離することができる場合には、仲裁に付託された事項に関する判定を含む判断の部分は、承認し、かつ、執行することができるものとする。
(d) 仲裁機関の構成又は仲裁手続が、当事者の合意に従っていなかったこと又は、そのような合意がなかったときは、仲裁が行なわれた国の法令に従っていなかったこと。
(e) 判断が、まだ当事者を拘束するものとなるに至っていないこと又は、その判断がされた国若しくはその判断の基礎となった法令の属する国の権限のある機関により、取り消されたか若しくは停止されたこと。
仲裁判断の承認及び執行は、承認及び執行が求められた国の権限のある機関が次のことを認める場合においても、拒否することができる。
(a) 紛争の対象である事項がその国の法令により仲裁による解決が不可能なものであること。
(b) 判断の承認及び執行がその国の公の秩序に反すること。
第6条
判断の取消し又は停止が、第5条1(e)に掲げる権限のある機関に対し申し立てられている場合において、判断が援用されている機関は、適当と認めるときは、判断の執行についての決定を延期することができ、かつ、判断の執行を求めている当事者の申立てがあるときは、相当な保障を立てることを相手方に命ずることができる。
第7条
この条約の規定は、締約国が締結する仲裁判断の承認及び執行に関する多数国間又は二国間の合意の効力に影響を及ぼすものではなく、また、仲裁判断が援用される国の法令又は条約により認められる方法及び限度で関係当事者が仲裁判断を利用するいかなる権利をも奪うものではない。
1923年の仲裁条項に関するジュネーヴ議定書及び1927年の外国仲裁判断の執行に関するジュネーヴ条約は、締約国がこの条約により拘束される時から、及びその限度において、それらの国の間で効力を失うものとする。
第8条
この条約は、国際連合加盟国のため、及びその他の国であって、国際連合の専門機関の加盟国であるか若しくは今後その加盟国となるもの、国際司法裁判所規定の当事国であるか若しくは今後その当事国となるもの又は国際連合総会が招請状を発したもののため、1958年12月31日まで署名のために開放しておく。
この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。
第9条
この条約は、第8条に掲げるすべての国に対し加入のために開放しておく。
加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することにより行なうものとする。
第10条
いかなる国も、署名、批准又は加入の際に、その国が国際関係について責任を有する領域の全部又は一部にこの条約の適用を及ぼす旨を宣言することができる。その宣言は、この条約がその国について効力を生ずる時に、その効力を生ずる。
前記の適用の拡張は、その後いつでも国際連合事務総長にあてた通告により行なうものとし、国際連合事務総長がその通告を受領した日の後90日目又はこの条約が当該国について効力を生じた日のいずれかおそい日から効力を生ずるものとする。
署名、批准又は加入の際にこの条約の適用を及ぼさなかった領域については、各関係国は、憲法上の理由により必要があるときは、その領域の政府の同意を得ることを条件として、その領域にこの条約の適用を及ぼすため必要な措置を執ることの可能性を考慮するものとする。
第11条
連邦制又は非単一制の国の場合には、次の規定を適用する。
(a) この条約の条項で連邦の機関の立法権の範囲内にあるものについては、連邦の政府の義務は、この範囲では連邦制の国でない締約国の義務と同一とする。
(b) この条約の条項で、州又は連邦の立法権の範囲内にあり、かつ、連邦の憲法上立法措置を執ることを義務づけられていないものについては、連邦の政府は、州又は連邦の適当な機関に対し、できる限りすみやかに、好意的な勧告を附してその条項を通報しなければならない。
(c) この条約の締約国である連邦制の国は、国際連合事務総長を通じて伝達される他の締約国の要求により、この条約の個個の条項に関する連邦及びその構成単位の法令及び慣行についての説明を提出し、かつ、立法その他の措置によりいかなる程度にその条項が実施されたかを示さなければならない。
第12条
この条約は、第3番目の批准書又は加入書の寄託の日から90日目に効力を生ずる。
第3番目の批准書又は加入書の寄託の後にこの条約を批准し又はこれに加入する各国については、この条約は、その国の批准書又は加入書の寄託の後90日目に効力を生ずる。
第13条
締約国は、国際連合事務総長にあてた文書による通告により、この条約を廃棄することができる。廃棄は、同事務総長が通告を受領した日の後1年で効力を生ずる。
第10条の規定に基づき宣言又は通告を行なった国は、その後いつでも、国際連合事務総長にあてた通告により、同事務総長がその通告を受領した日の後1年でこの条約の適用を関係領域に及ぼすことを終止する旨を宣言することができる。
この条約は、廃棄が効力を生ずる前に承認又は執行の手続が開始された仲裁判断については、引き続き適用する。
第14条
締約国は、他の締約国に対し、この条約の適用を義務づけられている範囲を除き、この条約を援用する権利を有しないものとする。
第15条
国際連合事務総長は、第8条に掲げる国に対し、次の事項について通告するものとする。
(a) 第8条の規定による署名及び批准
(b) 第9条の規定による加入
(c) 第1条、第10条及び第11条の規定に基づく宣言及び通告
(d) 第12条の規定によりこの条約が効力を生ずる日
(e) 第13条の規定による廃棄及び通告
第16条
この条約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語、及びスペイン語の本文をひとしく正文とし、国際連合の記録に寄託するものとする。
国際連合事務総長は、第8条に掲げる国に対し、この条約の認証謄本を送付するものとする。